blackcrows atris

使い勝手のいいatris

確か、blackcrowsの中では、セミキャップでステップダウン形状を採用した初のモデルだったと思います。
試乗会やリフト乗車中に様々な方とお話しする機会がありましたが、上級者やマニアのなかの一部の方々にはサンドイッチ至上主義のような方もいるんです。
確かにサンドイッチ構造は伝統的だしアルペンレーシングのワールドカップ選手専用の板のほとんどがサンドイッチ構造です。
そういった背景から、サンドイッチ構造が良い!と言う意見も間違ってはいないと思います。
見た目も何となくスキー知ってるぞ感がありますしね。

実際はどうかと言うと、サンドイッチでもセミキャップでもキャップでも変わりありません。
ヨーロッパを中心にブランド力を高めるため、競技の世界での板の役割はベストタイムを叩き出し、表彰台に上がりメディアに強烈に訴える広告塔としての役割があるので、常にベストコンディションの板の状態を出すために、サンドイッチ構造が選ばれています。
代償として、非常にセンシティブな乗り味になり耐久性が非常に低い板なのです。
耐久性が低いということは、滑るたびに乗り味が変化し続けるのです。

そういった構造のスキーを一般向けに提供することはとてもリスクがあります。
耐久消費財ほどではありませんが、一度手に入れた新品のスキー板は少なくとも4シーズンは履き続けるのではないでしょうか?

そこで、耐久性と乗り味を両立できる構造としてキャップスキーが開発されたのです。
確かに最初のサロモンはびっくりするような特性でした。
リリース前のシーズンに乗った記憶がありますが、トップとテールが異次元の柔らかさで、自分の滑りの順応性を試された気がしました。

では現代のキャップ構造はと言うと、内部構造の専用開発が進み、フルキャップでも耐久性が向上して全体のバランスも非常にいいものが各メーカーから排出されています。

atrisが創造した世界

更にatrisでは、セミキャップステップダウンと言うサンドイッチ構造の良さをそのままにして、耐久性も確保し、足下からテールにかけての踏み応えを確保したスキーらしいスキーに仕上げられています。
この構造がatrisに採用された事で、blackcrows skisの新たな世界観が広がりました。

スキー場のコース内のほとんどが圧雪車で綺麗に整えられています。
朝イチのコース滑走は気持ちのいいものです。
atrisはこの気持ちよさを、幅広のファット系スキーでも味わえる板に仕上げています。
ではパウダーはと言うと、進化したatrisはパウダーゾーンでテールが程よくスライドして特有の浮遊感に、ドリフト的な要素が加わり新しい感覚へと導いてくれます。
これらの間隔はサンドイッチ構造で実現するには相当のコストを支払う必要があると思います。

実際に3シーズン乗りましたが、コース内では楽しくカービングして、腰ほどの深さのパウダーゾーンでもスルスルっと雪のサフェース面を滑れました。
1本の板でどんな状況でも楽しく滑りたい方にはベストバイな板だと確信しています。

blackcrows atris

atris

 

スペック

length 184.2cm
tip: 13.9cm
waist:10.8cm
tail:12.6cm
radiusu: 20m
weight:4.0kg/セット@184.2cm

技術仕様
ポプラ芯材
セミキャップ・ステップダウン構造
ダブルロッカー
足下クラシックキャンバー

Motto: joie de vivre



blackcrows nocta

nocta

マジックなのかテクノロジーなのか、初代noctaの印象は浮くのに減速しない板でした。
その頃の一般的なファットスキーは、ある程度急斜面になると減速してしまうものばかり。
理由は単純で、浮かせることばかり考えた設計思想でノーズで雪を掴んでしまって浮くのだけれど板の先端部が沈まないので、滑走面の1/3を空中に浮かしてしまい、加速感に乏しくストレスが残ってしまうのです
じゃあノーズ下げればいいじゃんて事で、下げようとすると沈みすぎるので筋力とバランスを保ちながらのパウダーランは文字通り地面を走っているような感覚になってしまって、スキー本来の浮遊感と疾走感からは遠ざけられていました。

そこでnoctaの登場です。
急斜面でもスピード出るし、浮くし、沈められるし、何より驚いたのがマッシュから軽く飛んで着地しても、まるでフロートが先端についているかのように浮き上がるんです。
パウダーマシンだなと素直に感じた板です。

進化は続く

そして今季モデルのnoctaです。
フロート感のある特性は変わらず、初代より1キロ以上ダイエットしたままリバウンドせず、パウダーの中で板を振れるって本当に素晴らしい。
エッヂの効き具合がホントに絶妙で、自分の理想の操作感を実現してくれます。
当たり前のようですが、「浮くし曲がる」板ってそれほど存在しないです。
世界中の雪質や好みが変わらないうちは、しばらくはモデルチェンジせずにいて欲しいと思っていしまうほどいい板に仕上がっています。
形状的には、リバースキャンバーですが、ラディウスを26mまで大きくして操作感と安定感を実現しています。
安定感はパウダーから整地バーンに戻った時、足元がすくわれる感覚が全くなくそのまま自然に滑り降りていけます。

blackcrows skis

blackcrows nocta

 

スペック

length 185.5cm
tip: 12.2cm
waist:11.5cm
tail:13.2cm
radiusu: 26m
weight:4.0kg/セット@185.5cm

技術仕様
桐ーポプラー桐 (サンドイッチ)
グラスファイバー
セミキャップ構造
ABSサイドウォール

Motto: I take you both home

blackcrows anima

第一印象は悪かった

animaリリース前に乗った感覚が不思議で仕方ありませんでした。
緩斜面でインサイドエッヂを押し出そうとすると、引っかかるようでスライドするし、ターンしようとすると半テンポ遅れるような感じでした。
ホンダの創業者は自動車を10mも走らせれば特性がすぐに分かるという逸話を聞いたことがありますが、僕にはそんな短い距離では板の特性が理解できないようです。
キートップも仕上げ途中のようなデザイン。何もかもがヘンテコな板の印象でした。

テストする際は出来るだけ固いバーンがあるスキー場を選びます。
コンディションが安定しているエリアだと滑走時の感覚が、雪の状態に影響されにくいからです。
比較的近くに軽井沢プリンスホテルスキー場があるので、テストのほとんどを行っています。
もちろん、フランスでは更に本格的なテストを2シーズン前に行っていて、僕たちが滑っているのは国内のスキーヤーや販売店向けにどういったフィーリングを伝えればいいのか、どんなユーザーに適しているのかを見極めるためです。
ちなみに、板の滑走性はよほど変わった滑走面素材を使用しない限り、ストラクチャーとワックスで決まります。
テストの際、ストラクチャーは工場出荷時のまま、ワックスはあるメーカーにお願いして供給されているパラフィン主体のワックスを3コート3スクレイプしています。
当然の事ですが、ブラッシングもきっちり行います。

滑り出しから本当に不思議なバランスで、どう滑れば板のポテンシャルを引き出せるのか分からなくなって、数回リフトに乗った時に飽きてしまって、どうでもよくなってしまいました。
気持ちが緩んで、適当なバランスで流すように滑り出した途端、animaは動き出しました。
たわみやねじれなど一切意識せずに、大きく回ったり、壁に当てたり、クイックでショートターンしても板が自分から離れない。
スーパーナチュラルな感覚の板です。

低速で遊んじゃいけないよ。そうanimaがつぶやいているようでした。
今季僕がメインで乗る板はanimaです。
なかなか手が出しにくいモデルのようですが、パウダーメインでゲレンデの整地コースも滑りたい。ビッグマウンテンの感性のままどこでもチャレンジしたいという方に向いていると思います。
安比高原や夏油などいつも通っている山(スキー場)が大きなところの方にも向いています。

大きなターンが楽しいです。小回りはエッヂを外せる滑りができれば問題ありません。
仕様的にはダブルロッカーですが、足下にはしっかりクラシックキャンバーが残っていまので、操作性は抜群です。
トップとテールの不思議なフレックスが楽しいと思います。

anima

blackcrows skis anima



スペック

length 182.1cm
tip: 14.2cm
waist:11.5cm
tail:12.6cm
radiusu: 21m
weight:4.3kg/セット@182.1cm

技術仕様

セミキャップ(センターよりステップダウン)構造
ポプラ芯材
カーボン・ケブラー生地
Motto: I think you need a shower

blackcrows corvus

blackcrowsの存在感を示すジャンル Big mountain
その中でも corvusは最もblackcrowsを表現するにふさわしいモデルです。
一般的に日本では、幅や長さなど数値的や素材などを中心にスキーの性能やテイストを表現していますが、私たちはあまりそういった表現は得意ではありません。
反論を覚悟にあえて言いますが、私たちは長きにわたり製造物の設計や試験、化学特性などの実験を経験しているため、工業的知識、素材の特性、数値的判断は他の日本のインポーターよりも素地があります。
スキーの滑走する魅力は数値や設計で決まるものではないと考えます。
スキーヤーの滑走技術、気象変化、雪や起伏の条件変化、滑走場所のブッシュや岩、視覚的な恐怖感や解放感、そして一緒に滑る仲間たち。
スキー板の設計だけでは計り知れないスポーツです。
何より大切なのは、スキーヤーがスキー板や他の道具を自在に操れ、滑走技術なりの楽しさを存分に味わえることだと思います。
自分の滑りのイメージを引き出してくれる道具たち。その一つとしてblackcrows skisはスキーヤーの皆様をサポートしたいのです。


corvus誕生当初、日本人では乗りこなせる人は限られているだろうと考えていました。
実際滑っても、ターン始動には多くの内転筋と足腰の強さが必要で、フリーライドの板としても超重量級でした。
そのため、スキーらしくない楽しさも見出すことが出来ました。
朝、寝坊してゲレンデに行くとパウダーゾーンがギッタギタに荒らされ、スキーヤーの多くは残りのパウダーを分断したトラックに苦戦しています。
スノーボードのようにトラックをものともせずに滑りぬいて、他のトラックなどは気にせず自分の思い描いたターンを出来る満足感。それが初期のcorvusにはありました。
圧雪されたコースでも板の重たさとしなりで綺麗なカービングターンも描けたのです。そう、ゲレンデでは怖いものなしのスキーでした。

corvusは進化を遂げました。
センターはフラット、前後にblackcrows特有のリバースキャンバーが施され、ごく薄いダブルチタンを足下に格納。
21mのラディウスで回しさすさをキープです。
実はこのモデルがリリースされる一シーズン前、同じような板がリリースされています。
deamonです。リバースキャンバーと言うと十数年前に登場した他メーカーの地獄のベントを思い出します。とにかくフラットバーンは恐怖で減速がやっとの板でした。
deamonはそんな僕らのイメージを大きく覆してくれました。
ゲレンデがとにかく滑りやすい。気持ちよくスライドしてくれるのです。
しかも、最近の板のようにビンディングとの間にプレートが存在しないため、とても軽快なターンの切り返しが実現したのです。
それでもアイスバーンでもきっちりターンできる。
今季モデルのcorvusはその設計思想を活かして進化させたのです。
凍ったバーンでも、ひざ下のパウダーでも、腰パウでも自分の能力をブーストしてくれる1台に仕上がりました。

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blackcrows corvus



スペック

length 183.4cm
tip: 13.7cm
waist:10.7cm
tail:12.6cm
radiusu: 21m
weight:3.9kg/セット@183.4cm(前モデルより500g軽量化しました)

技術仕様

セミキャップ構造
ポプラ芯材
120cmダブルチタンプレート
Motto:french people are so rude